バイアスとは
先入観や偏りの意味で使われる言葉。
心理学や統計学などでよく使用される。
人はバイアスによって、無意識に決断する、特定のデータのみに着目して間違った判断をするなどの場合がある。
確証バイアス(Confirmation Bias)
自分の信念や先入観を裏付ける情報だけを重視し、反対の情報を無視する心理的傾向。
自分が見たい、聞きたいものにしか興味がない。
- 例
- あるダイエット法が効果的だと信じている人が、その方法の成功事例だけを探し、失敗事例を無視する。
- ある特定の政治的信念を持つ人が、自分の意見を支持するニュースや記事ばかりを読む。
- 研究者が自分の仮説を支持するデータを重視し、反対するデータを過小評価する。
- 特定の政治的意見を持つ人が、その意見を支持するニュースサイトや記事ばかりを読む傾向がある。
一方、反対意見を提示する情報は無視する、あるいは信頼性が低いと判断する。
アンカリング効果(anchoring effect)
最初に得た情報が、その後の判断や評価に大きな影響を与える。
- 例
- 販売者が商品の元の価格を高く設定し、その後に割引価格を提示することで、消費者にお得感を感じさせる。
- 不動産業者が高い価格を初めに提示することで、交渉がその価格を基準に進むため、最終的な売買価格も高くなる傾向がある。
- 高額な料理をメニューの上部に配置することで、他の料理が相対的にお手頃に見えるようにする。
- 株式投資で過去の値上がり実績をもとに株式を購入する場合、過去の値上がりがアンカーとなり、
今後の値動きを予測する際に影響を与える。
冷静に考えれば過去の値上がりと今後の値動きには関係がないにもかかわらず、
多くの投資家は過去のデータに基づいて判断する。
ハロー効果(Halo Effect)
ある人や物の特定の特徴が、その全体的な評価に影響を与えること。
- 例
- 魅力的な見た目の人が、実際に能力が高いと評価される。
- 高級ブランドの商品は、品質が高いと自動的に評価されやすい。
- パッケージデザインが美しいと中身も良いと感じることがある。
- リーダーがカリスマ性を持っていると、全体的な能力や判断力も優れていると見なされやすい。
- レビュアーの評価が高ければ、その意見が他のユーザーにも影響を与えることがある。
- レストランでウェイターが非常に親切であると、料理や全体のサービスも高く評価されやすい。
- 医師が優れたコミュニケーション能力を持っていると、診断や治療の質も高く感じられることがある。
フレーミング効果(framing effect)
情報の提示の仕方が、意思決定に影響を与えること。
- 例
- 製品の効果を「90%成功」と表現するか「10%失敗」と表現するかで、消費者の購入意欲が変わる。
- 商品を「20%オフ」として宣伝するか、「通常価格の80%」と表現するかで、消費者の購買意欲が変わる。
- 「投資額の80%が保証される」と表現するか、「20%の損失リスクがある」と表現するかで、投資家の行動が変わる。
- 候補者の政策を「雇用を20%増やす」と表現するか、「失業率が10%減少する」と表現するかで、有権者の支持に影響を与える。
現状維持バイアス(Status Quo Bias)
現在の状態を維持しようとする傾向。
- 例
- 長年同じ銀行を利用しているため、他の銀行の方が良い条件を提示しても変更しない。
- 現在の職場環境に不満を持っていても、転職や部署移動をためらうことがある。
- 恋愛や友情において、不満があっても関係を続ける。
- 患者が新しい治療法や薬を試すことに抵抗を感じ、従来の治療法を続ける。
楽観バイアス(Optimism Bias)
未来に対して過度に楽観的である傾向。
- 例
- 自分は他人よりも交通事故に遭う確率が低いと信じる。
記憶バイアス(Recall Bias)
過去の出来事を思い出す際に、特定の情報だけを強調する傾向。
- 例
- 旅行の良い思い出ばかりを覚えていて、トラブルを忘れる。
反応バイアス(Response Bias)
アンケートや調査で、質問に対して社会的に望ましい回答をする傾向。
- 例
- アンケートで、自分の食生活が健康的だと答えるが、実際は違う。
保持バイアス(Conservatism Bias)
新しい証拠に対して過度に保守的であり、以前の信念を変更するのを避ける傾向。
露出効果(Mere Exposure Effect)
繰り返し接触することで、対象に対する好意が増す現象。
- 例
- あるブランドの広告を何度も見ることで、そのブランドに好感を持つようになる。
後知恵バイアス(Hindsight Bias)
ある出来事が起きた後で、それが予測可能だったと考える傾向。
- 例
- 株価が急騰した後で、その変動を事前に予測できたと信じる。
自己奉仕バイアス(Self-Serving Bias)
成功は自分の努力の結果とし、失敗は外部要因のせいにする傾向。
- 例
- テストで高得点を取ったとき、自分の勉強が良かったと考え、低得点だったときは問題が難しかったと考える。
正常性バイアス
予想外の事態や、明らかに問題がある出来事に遭遇しても、自身にとって都合の悪い情報を無視してしまい、
「自分は大丈夫」と認識する状態。
- 例
- 同業他社が経営不振に陥って倒産したとの情報を耳にした際、「うちの会社は他社と違って倒産しないだろう」と根拠もなく思い込む。
同調性バイアス
従来の方法や多数派が取る行動に同調し、行動しようとする。
多数派同調バイアス・集団同調性バイアスとも呼ばれる。
- 例
- 同調性バイアスの強い社員が集まると、会議で多数派の意見ばかりが採用され、意見交換しにくい雰囲気になる。
結果としてイノベーションが生まれなくなる。
- ハラスメントや不正の現場を目撃した際、多くの社員が見てみぬ振りをしていれば、自分もそのように振る舞おうとする傾向がある。
サンプリングバイアス(Sampling Bias)
特定の集団やデータが過剰に代表され、全体を正確に反映していないこと。
- 例
- 製品のユーザーレビューをオンラインで集める場合、インターネットを頻繁に利用する層の意見が過剰に反映され、他の層の意見が反映されない。
- 都市部の住民だけを対象にアンケート調査を行い、結果を全国の意見として発表する。
- 若年層のみを対象にした薬の臨床試験では、高齢者に対する薬の効果や副作用が適切に評価されないことがある。
- 特定の地域の店舗だけで実施されたマーケティング調査は、全国展開を考える際に正確な結果をもたらさない。
ステレオタイプ(Stereotype)
特定の集団に対して一般化されたイメージや固定観念を持つ。
- 例
- 理系は男性に向いているという固定観念があるため、女子生徒が理系科目を選択することをためらう。
また、教師が男子生徒に対してのみ理系科目の奨励をする。
- 特定の学校出身者が優秀であると決めつけ、他の学校出身者を不当に評価する。
- 家事や育児は女性の役割であるという固定観念から、男性が積極的に参加しない。
また、女性がキャリアを追求することに対して否定的な見方をする。